あの日あの頃
ふと、手にとった1冊は、林望さんの”僕の哀しい失敗”
深いものはない(今、思えば)ぼんやりとしたあの時、そうだったなと、思いだした。
車が主な遊び道具だったあの頃だ。
あの頃は退屈で退屈で仕方なかったのに、今思えばなんて贅沢な時期だったたろう。
なんにもすることがない、ただ車を運転するのだ。
何をするでもない、友人Nと赤城山へでも行ってみようか、などということになった。
たぶん、パルサーだったか?もちろんエアコンなんて装備されていない、格安で購入したろうそれは、ややサスペンションがヘタっていたが、そんなことは寧ろウエルカムなことで、車高を落とした車みたいでかえって楽しかったものだ。
しかし、天気はどんよりとしていたので、行きがてらなんともスッキリしないものがあってお互いちょっぴり口数も少ない。彼の車に装備されていたメタルボディーのサンヨー製カセットテープから何が流れていたかも覚えていない。
山道をくねくねするころ、登るにつれて雲の隙間から青空が顔を出し始め、やがて真っ青な空だけになってきたと同時に、俺たちの気持ちもすっかりクリアになってさっきまでのスッキリしない気持ちがまるでウソのように晴れやかになった。天気ってスゴイ。
何があるわけでもない、ナンパするとかそんなでもない。 ただ、ただ、雲達がすっかりいなくなった赤城山南面道路をくねくねと曲がって頂上でいっぷくして帰ってきてその日が終わったのだ。
なにもない。意味もない。 しかし、今思うと極めて贅沢なひと時を過ごしたものだ。