白というもの

何色が好きですか?

なんていうのは、今時会話で持ち出す人はいないだろうけど、若い頃は、たびたび話の中にそのキーワーが出てきた気がする。 そんなときは、大抵、う~ん、白!と答えていた。 白って、ホントに白いときは綺麗だけど、数年もするといろんな余計なものがついてくる。正確には、他の色だって同じだけれども。。 そういう穢れもない、清らかなものに憧れていたのかも知れないけど、白だと邪魔しないことが多そうで、たとえばどぎつい他のみたいに時には眉をしかめるような眼差しで見られるようなことも少なそうだからかも知れない。また、その時代の色だったのかもしれない。 あの頃はペンションブームで脱サラをしてペンションを営むのがステータスみたいなものになっていたな、そう、そして高原には白いペンションじゃなければならない程度にまで白いペンションがあちらこちらにあったからかもしれないな。今思い返すとね。

そんな瞬間に、軽井沢だったと思うけれども、目の前に登場したのが白いVWビートルのカブリオレだった(多分1303)。ご夫婦(おそらく。。)で乗られ、お互いに白のキャップをかぶっていた。あの頃はペアルックなんてフツーだったのだ。リアシートには恐らくテニスラケットが積んであったのだろう?木製のね。

素適だった、羨ましかった。それは典型的な真っ白だった。

 

あれから年月が経ち、白は寂れた。 白いペンションの壁は剥がれやらコケのようなもの、それからくすみ、朽ち果てていって、しまいにはまったくの更地になってどこでもみるような雑草達がどこからともなくやってきて本来の色になろうとし始めていた。

そして白い車も白い車であるためにはある程度労力を必要とすることも後になって知った。

気が付くといつの間にか白はなくなっていた。 そしてツマラナイものにしか白は使われなくなったように思える。(もちろん、偏見ですよ)

白は維持するのは大変なのですね。 他の色だって同じなのに汚れが目立つというだけで。

 

今、外では雨が降り、どんよりと重い空に満たされ、テレビでは、息が詰まるような現実ばかりが取り出さされている。 テレビのスイッチは切り、おおかた、地方のラジオを聴く。その局からは、ハワイアン、ボサノバ、など今、聴くに相応しいBGMが頻りに流れている。

そしてあの頃見た白いカブリオレ、白い2つのキャップそして背景には白いペンションすっと浮かんでくる。 汚れも、剥がれも、くすみもない、美しい真っ白がね。