柿の種が消えた
”わたくし、今年で還暦ですョ”
長い髪を後ろで束ねた肌艶のよいマスターは少し頬を緩まして答えてくれた。
歳よりも若く見える方がいると私は必ずこんな質問をする。
”好きな食べ物ってなんです?”
この年になって食のことは気にするようなって、つい、こんなくだらないありきたりの質問をしてしまう。 体は食べ物で出来ている。同じようにあやかりたいのだ。 ひとつ、ふたつ、そんなきっかけで30分は話が続く。
そんなか、マスターが教えてくれた。
”煎り酒ってご存じですか?、成城石井とかAmazonなど売っていますけど、お酒と梅からできている調味料で、醤油の変わりに使っています。塩分は気を付けてますかね~”
ほうほう、いい話を聞いた。なるほどそれはマネさせてもらうしかないと、忘れないように即座にスマホから自宅パソコンへメールを送っておく。そうしておくのは飲んでいる最中に折角仕入れた情報が記憶のなかでかすれてもいいようにしておくためだ。 案の定、その後は煎り酒のことなどすっかり忘れてマスターのおかげでとても楽しい時間を過ごさしてもらった。
指が写ってますね。これもお酒お酒のせいよ。 グレンジストーンは謎のアイラらしい。 それにしてもこれほどBARに言っても同じ酒を飲んだことがほとんどない。まだまだ奥が深く興味は尽きそうもない、体が元気な限り。。。
そう、そんなこともちょっぴり忘れてしばらくしてから煎り酒を手に入れた。 それがこれね。
煎り酒は醤油より歴史が古いらしい、塩分控えめでうま味が濃くておさしみとかに最適だとマスターが言っていた。今宵はこいつを試してみよう。 けれど、おさしみじゃなくて納豆だけどねー。
と、このブログを記述しながらウヰスキーをのみ、柿の種をつまんでいたら服の中につまんだ種が落ちちゃった・
探すこともしないでしばらくして、トイレにいったらコロンと種ひとつと半割れの種とピーナッツの3っつが床に転がった。